labo. エルメス手帳の使い方

エルメス手帳をこよなく愛し、時々海外ドラママニア。大人らしく、都会で自由に暮らす。エルメス手帳の使い方を日々研究中。

【本】CC:カーボンコピー:広告業界のいろいろが物語にちょうどよく組み込まれている小説

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初めてこの本を読んだだいぶ前も、今回読み返しても、やっぱり素晴らしいと思う本。仕事で関わることが多い広告業界のリアルをちょうどいい感じに恋愛と絡め、人間関係と絡めて進んで行くこの具合が最高です。私の中で記憶に残る本1位を選べと言われたら現在の時点でだったら迷わずこれを選びます。

 

▶︎あらすじ

広告代理店で働く、山里香純41歳。年下の恋人である生命保険会社の広報担当、広崎研吾を助けるため保険金不払い問題に対処する広告プロジェクトを手がけるが、思わぬ波紋が社会に広がり、私生活にも―。

 

まず広告業界って実際に関わっていると、正直就職したいとは思わないなってなってしまう私(笑)大学生に「第一希望は広告代理店です」と相談されたら「頑張れ」とは言うけど。そのくらい景気にも左右されるし、クリエイティブな発想も必要だし、人に頭を下げることも多く気を使うというのが私の広告業界のイメージ。あとは働いている人が楽しそうっていうのと、業界が好きな人が多いなっていうイメージです。

 

特に大手になればやっぱり社員は優秀だとは思うのですが、ピンもキリもいるっていう。実際に代理店側の視点で読むか、それともクライアント側の視点で読むかでだいぶ違うのかなとも思います。業界の専門的なことをいうと、もっと詳しく掘り下げている専門書はたくさんあると思う。この本のすごいところは、これを小説として物語に知識と人間関係、主人公の恋愛模様も組み込まれているところだと思いました。

 

恋愛事情でいうと、離婚した元旦那がボス(会社の社長)で、さらに舅姑が大ボスなわけです。そして主人公は姑にものすごい憧れ、彼女に褒められたくて頑張る。離婚してもその会社で働き続けるわけです。そんな中、数年前に一緒に仕事をした年下男子が急成長して(というか出世して)戻ってくる。もちろん、営業としてこれはチャンスなわけです。当時面倒みた新人くんがそこそこになって戻ってくるわけだから。で、ホテルの部屋で事情前後にされる会話がまたすごい。主人公が困ってる彼に仕掛けていく。

 

「これから僕も大変になるから公私ともによろしくね(略)」

「公私ってことは仕事の面もってことよね?」

「そうだよ。プライベートの面では僕があなたを喜ばせてあげるから、そのかわり仕事の面ではあなたが僕を喜ばせてくれる。ねえ、それっていいでしょ?」

「私、仕事にプライバシーは持ち込まない主義なんだけどな」


完全に彼女の方が上手(笑)このセリフをクライアントの担当者に言わせてしまうって、駆け引き的に言ったら「勝ち」ですよね。これだけじゃないんですよ。彼女のさすがなところ。いろいろと彼を巻き込んで仕事を取りにいくんだけど、根回しのアドバイスを彼にするんです。その言葉が秀逸。

「ボタンを押すのはひとつだけよ」

上司への根回しをできるだけしようとする彼にこれまた的確なアドバイス。人って誰かを味方につけようと思った時に、やっぱり人数が多い方がいいって思えば、たくさんの人に極秘に話をして行きたくなるじゃないですか。でも違う。

「ボタンをいくつも押すのは逆効果なの。これはこれはどんな場合にも心しておくのがいいことだけど、この人、という本丸にだけ的を絞ってアプローチするのよ。その人だけを信頼しているのってわからせるのね。真摯な態度でよ」

その通りだわ。根回しって結構私もやるんですよね。立場的に代理店に近いっていうのもあって、今回の主人公の状況は多い。なるほど、こういう表現をするのかと頷きながら読んでいました。こんな感じのビジネス交渉術というか、テクニックって自分の肌感覚でしかわからないことが多い。改めて人に教えるとか、伝えるって難しいんですよ。感覚で判断することが多い上に、状況によって少し違ったりするから。でもこの表現はとってもわかりやすいし、伝わりやすいなと思いました。相性はあると思いますが、とってもとっても私は好きな本です。文庫でも電子でも持っている(笑)なんとなく読み返したくなる時期が定期的にくるのです。

 

やっぱり好きだ、幸田さん。

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